研究シーズ集

医療・健康・福祉

手指の常在菌叢:エタノール消毒および手洗いの効果

医学部 保健学科   

臨床化学研究室

保健学研究科 大学院生・医歯学系 教授

高橋 七瀬・佐藤 拓一 TAKAHASHI Nanase・SATO Takuichi

関連URL:
https://www.clg.niigata-u.ac.jp/introduction/inspection_prof.html?prof_code=PRF0045

専門分野 臨床化学、衛生学、細菌学
キーワード 手洗い、皮膚、常在菌、洗浄剤(泡状、液状)、備蓄

研究の目的、概要、期待される効果

 コロナ禍で、手指の消毒や衛生概念にこれまで以上の関心が高まっています。普段の手洗いや消毒が皮膚常在菌叢にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。洗浄剤を用いたり、長めに手洗いすることは効果的という報告があります。しかし、泡状と液状といった洗浄剤の形態の比較を行っている研究は殆どなく、洗浄剤の形態と手洗い効果との関連についてはいまだ不明です。洗浄剤の形状によって効果に差があるとすれば、意識させることなく、多くの人に今以上の手洗いの効果をもたらすことが期待できると考えられます。
 これまでの研究で、泡状洗浄剤と液状洗浄剤を用いた、手洗いにおける洗浄効果について解析したところ;1)細菌量は手洗いで大きな減少は見られませんでした。2)残留皮膚常在菌叢(細菌構成)では、手洗い無し→流水→泡状→液体状と強力に洗うに従って、Cutibacterium acnes(アクネ菌)の割合が減少し、Staphylococcus(ブドウ球菌)の割合が増加しました。C. acnesは皮脂の多いところを好み増殖するため、脂分を溶かす洗浄剤により容易に洗い流されやすいと考察しています。一方、エタノール消毒で細菌量は約20分の1に減少しましたが、細菌構成は大きな変化がありませんでした。
 皮膚常在細菌は、皮膚表面を弱酸性に傾け、感染を防ぐことから、普段の生活の中では必要な細菌です。このことより、手指衛生では皮膚常在菌叢のバランスを保つことが大事なのではないでしょうか。細菌構成を大きく変化させる石鹸での洗浄のしすぎには注意が必要なのかもしれません。

   
関連する知的財産論文等

■Takahashi N et al. Molecular Microbiological Profiling of Microbiota on Fingers and Touchscreens. The 52nd Annual Meeting & Exhibition of the AADOCR / 47th Annual Meeting of the CADR (Portland, Oregon, USA) 2023.3.18【口演(英語)発表】

アピールポイント

 コロナ禍で関心が高まっている手洗いの洗浄効果について、医学・保健学の最新の知見・検査技術を活用して、特に皮膚の残留常在菌叢について解析し、スキンケアについて新たな提言を目指す研究です。

つながりたい分野

・衛生学
・自治体における災害用の備蓄


お問い合わせは
新潟大学社会連携推進機構
ワンストップカウンター まで 
onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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