研究シーズ集

人文社会科学

文化史から考える「感情」 ~ 古代ギリシア美術の視点から ~

人文学部 心理・人間学プログラム/教育学部

田中研究室

人文社会科学系 教授

田中 咲子 TANAKA Emiko

専門分野 西洋美術史、古典考古学
キーワード 古代ギリシア美術、感情文化史、感情、葬礼美術、ポストヒューマニズム

研究の目的、概要、期待される効果

 感情といえば、心理学や脳科学が得意としてきた分野であり、感情「とは何か」に関する分析には膨大な蓄積があります。他方、「人は感情とどう向き合ってきたか」という価値観の問題は、それと比べてあまり研究が進んでいません。AIが人間を超えるという「シンギュラリティ」時代を目前に、近年私はこの問題に関心を抱き、人は感情をどう価値づけてきたかを、私が専門とする古代ギリシア美術史の立場から考えています。
 実はこの研究はまだ着手したばかりです。従来私は、古代ギリシアの墓碑浮彫や葬礼で用いた陶器に描かれた図像から、当時の人々が考えた美徳や規範概念を考察してきました。葬礼美術がいわば人生観の縮図だからです。この研究の過程で、そこに表された哀悼や悲嘆といった感情の図像表象に関心を持ったことが発端で、感情文化史に立脚した研究に着手しました。目下、大戦争や疫病など、時代の心性を大きく変化させる出来事に応じて感情の図像表現が変化する様子を辿っています。当時の絵画や彫刻には、為政者や権力者だけでなく、世間一般の思いが反映されているとの前提に立ち、それを読み解くことを目指しています。

   
関連する知的財産論文等

田中咲子『基本の「き」からの美術鑑賞入門』(ブックレット新潟大学71)新潟日報事業社、2020年

田中咲子「エーゲ時代からヘレニズム時代における『両手を上げる』身振りの編年と意味:哀悼と嘆願を中心に」『オリエント』 62(2), 2020, 194 – 195

田中咲子「『アキレウスの画家』の白地レキュトスにおける死者と生者」『西洋古典学研究』53, 2005, 34-46

アピールポイント

 研究対象は紀元前の地中海地域の美術ですが、そこには今日的課題を客観視し考察するヒントが隠れていると考えています。

つながりたい分野

・心理学や脳科学分野の感情研究者、団体。
・可能性を感じて下さった方々(この研究をどこで役立てて頂けるか本人としては見当がつきません)。


お問い合わせは
新潟大学社会連携推進機構
ワンストップカウンター まで 
onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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