研究シーズ集

医療・健康・福祉

”経験メッセンジャー”タンパク質による回路形成の分析

医学部

発達生理学研究室

医歯学系 教授

杉山 清佳 SUGIYAMA Sayaka

関連URL:
https://www.med.niigata-u.ac.jp/contents/activity/research/shinryou/shinkei.html

専門分野 神経発達学、神経生理学、神経形態学
キーワード 神経回路形成、脳の柔軟性、臨界期(感受性期)、視覚

研究の目的、概要、期待される効果

 赤ちゃんは見たり感じたりできますか?と質問すると、大人と同じと答える学生がいます。実際には赤ちゃんの脳は未熟で、脳の成長は周りの環境や経験によって大きく左右されます。母国語の習得にも聞いて話す経験が必要ですし、視力の向上にも見る経験が大切です。例えば、怪我などでこどもの片目に眼帯をすると、見る経験をさえぎられた目の視力が弱くなり、弱視を生じることがあります。しかし、経験が脳の機能を発達させる仕組みについては、世界的にも分からない点が多いのが現状です。
 これまでに、Otx2蛋白質が経験を脳細胞に伝えるというユニークな性質を持つことを明らかにしました。マウスの脳内において、この蛋白質の量を外部から操作すると、経験により脳が柔軟に成長する時期(臨界期)を人為的に操作できます。例えば、成体マウスの脳において蛋白質を減少させると(抗体や阻害ペプチド[特許4]を目や脳脊髄液に注入すると)、経験をリセットし、こどもの頃のように柔軟に回路を形成できるようになります。この技術を用いて、脳の成長を促進するための「遺伝子データベース」も作成しています。

   
関連する知的財産論文等

1: Sugiyama et al., Experience-dependent transfer of Otx2 homeoprotein into the visual cortex     activates postnatal plasticity. Cell 134, 508-520, 2008 (多くの新聞社に紹介記事あり)

2: Hou et al., Chondroitin sulfate is required for onset and offset of critical period plasticity in visual    cortex. Sci. Rep. 7:12646, 2017 (軟骨成分‐脳の発達促進:新潟日報・日本経済新聞に紹介記事あり)

3: Sakai et al., Genome-wide target analyses of Otx2 homeoprotein in postnatal cortex. Front. Neurosci. 11:307, 2017 (遺伝子データベースあり)

4: POLYPEPTIDES FOR SPECIFIC TARGETING TO OTX2 TARGET CELLS(WO2010081975 (A1))

アピールポイント

 脳が成長する過程で神経回路が誤配線されると、精神疾患が引き起こされやすくなります。回路を可視化し、柔軟に配線し治す仕組みが分かると、脳機能の再建に役立つと期待されます。

つながりたい分野

・ペプチドセンサー開発や生体分子材料開発に関わる製薬・医療・医工系メーカーなどの企業
・マウス視覚系をモデルとした新たな開発も可能です(認知・機能解析を含む)。


お問い合わせは
新潟大学社会連携推進機構
ワンストップカウンター まで 
onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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