農・食・バイオ
農学部 応用生命科学プログラム
応用原生生物学研究室
専門分野 | 原生生物の生態と機能、捕食者と被食者の相互作用、植物と微生物の相互作用 |
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キーワード | 原生生物、土壌微生物、水田、イネ、捕食性原生生物、バクテリア |
地球上の生命を持続的に維持し、食料不足という地球規模の問題を克服するためには、農業生産性や土壌肥沃度に直結する土壌微生物の重要性を認識する必要があります。
私は、水田、特にイネの根圏における原生生物の生態と機能に着目し、彼らは何者なのか、環境変化にどのように対応し、どのような機能的役割を担っているのかを明らかにする研究を行っており、これまで、「彼らは何者か」を解明するために、原生生物は水田において、捕食者、分解者、光独立栄養生物(混合栄養生物含む)、植物病原菌、動物・菌類寄生者など、分類学的・機能的に多様であることを明らかにしてきました(図1)。その中でも、捕食性原生生物は水田において最も多様で豊富な原生生物群であることから、その機能的重要性にさらに注目しました。
捕食性原生生物は、微生物、特にバクテリアの主要な捕食者です。私の最近の研究をまとめると原生生物とバクテリアの栄養学的相互作用は、しばしば土壌の肥沃度や植物の生産性を向上させます。原生生物はバクテリアを選択的に捕食するため、原生生物に狙われるバクテリア種は著しく減少します(図2)。同時に、原生生物に捕食されない細菌種や原生生物に捕食されても生き残ることができる細菌種は、原生生物の存在によって細菌の競争が減り、利益を得ることができます。したがって、原生生物による捕食は、根圏の細菌群集組成を変化させます(図2A)。原生生物がバクテリアを捕食すると、原生生物は(バクテリアのバイオマスに閉じ込められていた)過剰な栄養素を根圏に排泄し(図2B)、植物が摂取できるようになり、さらに、原生生物は、二次代謝産物や植物成長ホルモンの生産など、細菌の活動を活発化させます(図2C)。原生生物の中には、植物の病原菌を直接捕食し、病気の抑制に貢献するものもいる。これらを総合すると、原生生物は土壌の肥沃度を高め、植物の生産性を向上させます(図2D)。
原生生物は、細菌群集や機能を制御する役割を持つことから、根圏微生物群の「操り人形」と考えられています。持続的かつ高収量の農業生産性を実現するために、原生生物による根圏微生物群を操作することを研究の目標にしております。
関連する知的財産論文等 | Asiloglu R et al. 2021d, Soil Biology and Biochemistry, 161, 108397. Asiloglu R et al. 2021c, Soil Biology and Biochemistry, 156, 108186. Asiloglu R et al. 2021b, Biology and Fertility of Soils, 57, 293-304. Asiloglu R et al. 2021a, Biology and Fertility of Soils, 57, 15-29. Asiloglu R et al. 2020, Applied Soil Ecology, 2020, 154, 103599. |
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捕食性原生生物は、土壌の肥沃度や植物の生産性に非常に大きな影響を与えます。彼らは、潜在的なバイオスティミュラントとして使用することができます。
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