研究シーズ集

医療・健康・福祉

ヒトや動物は報酬やリスクを予測して生き延びている ~ 報酬やリスクに対する予測はどのように獲得されるのか ~

脳研究所

動物資源開発研究分野

脳研究所 教授

笹岡 俊邦 SASAOKA Toshikuni

関連URL:
https://www.bri.niigata-u.ac.jp/field/lab_animal/index.html

専門分野 神経科学、脳神経疾患、分子生物学、生化学、実験動物
キーワード ドーパミン、ドーパミン受容体、パーキンソン病、記憶学習、運動調節、遺伝子改変マウス、マーモセット

研究の目的、概要、期待される効果

 ドーパミンを神経伝達物質とするドーパミン神経は、運動の調節、外界の対象の知覚・判断・解釈、報酬学習などに働き、ドーパミンの働きの障害はパーキンソン病・統合失調症などにも深く関わります。近年、ドーパミン情報伝達は、リスク回避学習でも重要であると考えられています。
 私達は、D1ドーパミン受容体情報伝達欠損マウスを使って、リスク回避学習の試験を行いました。マウスは元より暗闇を好みますので、明暗箱では暗箱に移動します。暗箱に移動後電気ショックを与えて、暗箱と電気ショック(リスク)を結びつける試験において、正常マウスは、2週間以上記憶できるところ、D1ドーパミン受容体情報伝達欠損マウスは記憶できませんでした。なお同じマウスは、D1ドーパミン受容体情報伝達が回復すると記憶できることがわかりました(上図)。
 次に、D1ドーパミン受容体情報伝達欠損マウスを小箱(文脈)に入れ、音を鳴らした後に電気ショックで条件付けをする、文脈的恐怖条件付け試験において、数日後の近時記憶は保たれましたが、4週間後の遠隔記憶が障害されていました(下図)。一方、音と電気刺激を結びつけて記憶する聴覚的手がかり恐怖記憶試験では、近時記憶、遠隔記憶ともに保たれていました。この記憶に重要な脳部位は、海馬と線条体であることがわかりました。
 私達は、ドーパミンによる報酬やリスクを予測する仕組みを明らかにし、ドーパミンの量や働きを強める食品、薬物、物質などの開発につなげたいと希望しています。

   
関連する知的財産論文等

Saito et al., D1 receptor mediated dopaminergic neurotransmission facilitates remote memory of contextual fear conditioning. Front Behav Neurosci 2022 Feb 17;16:751053.

Saito et al., Neurotransmission through dopamine D1 receptors is required for aversive memory formation and Arc activation in the cerebral cortex. Neurosci Res 2020; 156: 58-65.

アピールポイント

 「報酬学習」と「リスク回避学習」に最適なモデルマウスを活用して、ドーパミンを増やす、働きを強くする物質や薬品を研究する環境を整えています。

つながりたい分野

・「ごほうび物質」と「リスク予測物質」としてのドーパミンを増やす、働きを強くする食品や薬品などの開発に関心のある企業、自治体、研究室。


お問い合わせは
新潟大学社会連携推進機構
ワンストップカウンター まで 
onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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