研究シーズ集

環境・エネルギー

藻場の磯焼けと、海水中の溶存鉄化学種濃度との関連についての研究

理学部 自然環境科学プログラム

環境分析化学研究室

自然科学系 教授

松岡 史郎 MATSUOKA Shiro

関連URL:
http://researchers.adm.niigata-u.ac.jp/html/525_ja.html

専門分野 分析化学
キーワード 沿岸海水、超微量鉄、スペシエーション分析、磯焼け

研究の目的、概要、期待される効果

 近年、沿岸域における「磯焼け」が漁業に深刻な被害を与えています。磯焼けの発生には多くの原因が考えられていますが、海藻の生育に必要な鉄濃度の減少もその一つに挙げられている。ところが、磯焼けや藻場の回復に関与する海水中の溶存鉄化学種については、その酸化状態さえも明らかにされていません。その最大の要因は、海水中に存在する溶存鉄化学種の化学状態別定量の困難さです。
 我々は、Fe(II)-フェナントロリン錯生成系を固相分光法(SPS法)に適用することで、海水中に存在するsub-mg dm-3レベルの溶存Fe(II)、 Fe(III) に関して、正確さの高い酸化状態別定量法を確立しました。さらに、この方法を用いることで、試料を採取したのち、定量に供するまでの試料溶液中の溶存鉄化学種の酸化状態の変化についても詳細に検討し、海水試料の採取・保存法に関する最適化も行いました。磯焼けの顕著な沿岸域と磯焼けの観測されない沿岸域において採取・保存した試料に対して、今回新たに構築した酸化状態別定量法を適用することにより、藻場の生育に必要な鉄化学種の化学形態についても検討を行っています。

図1 磯焼けした藻場(左)と健全な藻場(右)。右の図では藻場が衰退し石灰藻化が始まっている。藻場の再生には長い期間が必要となる。

   
関連する知的財産論文等

1)松岡史郎, 吉村和久,分析化学,Vol.54,No.12, 1137-1148 (2005).

2)Sarenqiqige, S. Saputro, S. Kai, M. Satoda, S. Matsuoka and K. Yoshimura,Anal. Sci., Vol.29, No.6, 677-680 (2013).

アピールポイント

 海水中に存在している sub-ppb レベルのFe(II)、Fe(III)、Cr(III)、 Cr(VI)の酸化状態別定量法開発や、これら分析法のオンサイト化に取り組んでいます。

つながりたい分野

・水質などの環境計測を通じ、人為由来・自然由来を問わず水質汚濁の原因究明を目指している分野、金属元素の化学状態別分析法を必要としている分野。


お問い合わせは
新潟大学社会連携推進機構
ワンストップカウンター まで 
onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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