研究シーズ集

農・食・バイオ

海産無脊椎動物地域集団の集団遺伝学的解析

理学部 自然環境科学プログラム

無脊椎動物学研究室

自然科学系 教授

宮﨑 勝己 MIYAZAKI Katsumi

専門分野 無脊椎動物学、系統進化・分類学
キーワード 無脊椎動物、海産動物、DNAマーカー、COI、マイクロサテライト

研究の目的、概要、期待される効果

 海産節足動物の一群であるウミグモ類は、生物学的には大変興味深いものの、人の生活や産業には全く関係しない動物と見なされていました。ところが2007年に東京湾でアサリの大量斃死が当然発生し、その原因がカイヤドリウミグモ幼生の大量寄生であることが明らかとなりました。本種は1926年に発見され、その時から二枚貝への寄生は知られていたのですが、寄生による貝の死亡例は無く、この斃死事件はウミグモ類が水産業に大きな影響を与えた世界最初の事例でした。この幼生の大量寄生はその後三河湾、福島・松川浦などでも発生し、東日本大震災をきっかけに個体群が消失した松川浦以外では、現在も被害は続いています。カイヤドリウミグモの産地は国内で数箇所が確認されており、各産地集団の由来や分布拡大の経路の解明は、明らかにすべき問題です。
 本研究では、この問題に対しDNAマーカーを使ってアプローチしています。ミトコンドリアDNA COI領域を使ったハプロタイプ解析では、東京湾・三河湾・松川浦個体群が遺伝的にまとまっていると共に、他の個体群とは大きく隔たっていることが明らかとなりました(五十嵐他, 2020)。現在は、国立環境研究所との共同研究で開発したマイクロサテライトマーカーを使い、より解像度を高めた解析を進めています。

   
関連する知的財産論文等

五十嵐陽大・玉置雅紀・宮﨑勝己 (2020) ミトコンドリアCOI遺伝子塩基配列に基づく日本産カイヤドリウミグモの集団遺伝学的解析.水生動物 2020-4.

宮﨑勝己・山田勝雅(編)(2019) カイヤドリウミグモ:大発生からの研究の動向.生物科学 70(2).

アピールポイント

 研究室としては、広く海産無脊椎動物の生物学に興味を持っています。紹介した解析手法は、これまでにウミグモ類の他、棘皮動物クモヒトデ類にも適用しています。

つながりたい分野

・海産動物を対象とするので、水産業関係者。
・組織学的手法や走査型電子顕微鏡による観察技術もあるので、それらが必要な企業や自治体関係者。


お問い合わせは
新潟大学社会連携推進機構
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onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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