研究シーズ集

医療・健康・福祉

哺乳瓶による授乳で口腔細菌が液体ミルクや搾乳母乳内へ流入する!

医学部 保健学科

臨床化学研究室

保健学研究科 非常勤講師・医歯学系 教授

涌井 杏奈・佐藤 拓一 WAKUI Anna・SATO Takuichi

関連URL:
https://www.clg.niigata-u.ac.jp/introduction/inspection_prof.html?prof_code=PRF0045

専門分野 臨床化学、口腔細菌学
キーワード 液体ミルク,母乳,哺乳瓶ニプル,授乳,救援援助物資

研究の目的、概要、期待される効果

 乳児用液体ミルクは、開封すればすぐに飲ませることができ、常温で保存できるという使用上の大きなメリットがあり、諸外国では広く普及しています。日本においては、東日本大震災の際に、救援援助物資として諸外国から提供され、好評を博しました。日本では長年、食品衛生法に基づく厚生労働省令に「液体ミルク」の規格基準がなく、認可が遅れていたものの、2019年4月から、日本のメーカーによる製造・販売が開始されました。使用上のメリットから、日本でも広く普及していくものと考えられます。
 日本での普及にあたっては、①高コスト、②短い賞味期限、③開封後に飲み残しを保管する可能性がある、といった、克服すべき課題があります。特に、飲み残しの観点については、飲み残した際の口腔からの唾液の流入や汚染、健康への影響が懸念されます。飲み残しは廃棄するようメーカーは推奨していますが、その根拠となると明確ではないようです。「もったいない」という価値観は、我々日本人特有のものかもしれないことから、日本でこそ、研究すべき課題といえるのかもしれません。
 これまで、乳児用飲料物(液体ミルクなど)を哺乳瓶を使って飲み、飲み残した際の口腔からの唾液の流入について研究し、相当量の唾液細菌が流入していることが判明し、さらに、飲み残しの保存・保管方法に関する一定の成果を収めることにも成功しました。さらに母乳についても、哺乳瓶を介して授乳すると、新生児の口腔内から逆流し、細菌叢構成が変化すること(図1)、そしてそうではあっても、ある程度の期間、冷蔵保存できる可能性が示唆されています。

   
関連する知的財産論文等

◆涌井杏奈,河内美帆,ほか:搾乳母乳と新生児口腔細菌叢との連関:網羅的・分子生物学的アプローチ(YIA受賞報告),臨床化学 53(1): 印刷中,2024.

◆涌井杏奈:母乳を含めた新生児用の飲料と口腔細菌叢との連関,(公財)ロッテ財団 第10回奨励研究助成(B)

◆Wakui A et al: Profiling of the microbiota of breast milk before and after feeding with an artificial nipple. Journal of Oral Biosciences 64(4): 431-436, 2022.

◆Wakui A et al: Bacterial concentration and composition in liquid baby formula and a baby drink consumed with an artificial nipple. Journal of Oral Biosciences 63(2): 161-168, 2021.

アピールポイント

 医学・歯学・保健学の最新の知見・検査技術を活用して、乳児用飲料物の飲ませ方・保管に関する新しい視点からの研究です。飲みかけのペットボトル飲料物の安全性や健康への影響など他の食品衛生学にも応用可能な研究手法・体制となっています。

つながりたい分野

・食品科学・食品衛生学
・食品(乳製品)製造・販売業


お問い合わせは
新潟大学社会連携推進機構
ワンストップカウンター まで 
onestop@adm.niigata-u.ac.jp

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