論文と特許

論文発表の意味は、研究の成果を広く知らせることであり、大学による社会貢献の本来的な行為です。

また、研究成果の事業化は、具体的な社会還元の手段と位置づけることができます。但し、論文に特許化しようとする成果が含まれている場合には、特許による権利の保全が大変重要になってきます。

特許による保護があれば、事業化にあたり、他企業が途中で参入してくることはないので、実施権等を保有する企業は、その技術の事業化に計画的に取り組むことができるからです。

一方、論文に特許化しようとする成果が含まれている場合、発表を急ぐあまり特許の出願を後回しにし、論文発表を行うと特許の成立要件(新規性など)が損なわれ、外国出願ができなくなることがあります(発表先によっては、新規性喪失の例外があります)。その結果、論文発表者の名誉と引き換えに社会と大学にもたらされるはずだった利益を失うことになりかねません。

研究成果の発表の場として、論文発表の重要性は極めて高いことから、いかに迅速に特許の出願判断と特許の出願を行うかが大きな課題となります。

 

注意すべきポイント

  • 論文発表により、特許出願前の研究成果が外部ヘ流出し、特許の申請要件である新規性を損なうことになりませんか?
  • 論文発表により、産学官連携活動の相手先の秘密情報等を漏洩することにつながらないかを十分に検討しましたか?
  • 発明に関わった人を事実とおりに発明者として申請していますか?学生等が発明を行った場合でも、発明者として取り扱う必要があります。

■ 学会での論文発表と出願のタイミングが適切でないと・・・

●新規性喪失の例外

特許法第30条に規定される、発明の公表から特許出願するまでに認められる猶予期間があります。先願主義のもとでは出願された「時」を基準とするので、出願前に開示された発明は、たとえ発明者自身による開示でも、原則として出願時には新規性を失っています。しかし、この原則が発明者にとって酷に過ぎると考えられる場合もあるので、一定の期間における開示に限って認めている例外です。ただし、自己の開示が公知例として拒絶理由とされないだけで、他人の特許出願が本人より先になされた場合の救済措置となるものではありません。

●学内発表会(修士論文発表会、卒業論文発表会等)の非公開化

特許出願を検討している発明について、学内での論文発表会等で公開された場合にも、新規性の喪失により特許を受けることができなくなります。そのため、論文発表会等の前に特許出願を行うことが最も重要です。しかしながら、やむを得ず出願前に発表する場合には、論文発表会等を非公開化することで、新規性の喪失を防止することができます。非公開化を希望する場合には、主催者に秘密保持の手続を願い出て下さい。

依頼された主催者は下記の①~③を行い、論文発表会等を非公開化してください。
(非公開化が可能な発表会例)卒論発表会・卒研発表会、修論発表会、これらの中間発表等
(注:博士論文については、上記とは取扱いが異なるのでご留意ください。)

①参加者に対して、発表会が非公開である旨を周知する。
発表会の発表内容を外部に漏洩しない旨を、発表会場入り口に掲示及び参加者に配布し周知すること。
周知にあたっては、『(見本)論文発表会会場での掲示・配布物』(学内限定)を活用いただいても結構です。
発表会中は、都度、口頭アナウンス等にて発表内容を外部に漏洩しないよう周知すること。

②発表関連資料に「部外秘」と記載する。
会場で配布する資料やプレゼン用スライド中の秘密情報に対して「部外秘」と明記すること。

③秘密保持に関する誓約書への署名
参加者全員に、発表内容を外部に漏洩しないことを了承した誓約書に署名してもらうこと。
誓約書は『(見本)学内発表会に係る誓約書』(学内限定)を活用いただいても結構です。

 

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