ー❝コシヒカリ新潟大学 NU1号❞の物語 ー

コシヒカリ新潟大学NU1号は、“おいしさを未来につなぐ新品種” です。

『コシヒカリ新潟大学NU1号』は、新潟大学農学部の三ツ井教授らによって開発されました。

その特徴は、「おいしさ」「粒の美しさ」そして「暑さに強い」ことです。

コシヒカリは、近年の温暖化による酷暑によって品質が低下する被害を受けています。
「米どころ新潟のコシヒカリを守りたい」という思いから、三ツ井教授は約20年間、研究をしてきました。

コシヒカリ従来の、口に入れたときのおいしさはそのままに、厳しい暑さでもしっかり育つ、美しくたくましい新品種です。

                          

 

1. コシヒカリについて

お米といえば、コシヒカリ。
コシヒカリは、おいしいお米の代名詞として長きにわたり県内外で親しまれてきました。その歴史はさかのぼること約80年、1944(昭和19)年に初めて交配されたことが誕生のきっかけです。お米作りに適した自然豊かな風土が生んだ「新潟県産コシヒカリ」は、その甘味、粘り、艶やかさ、香りなどが評価され、新潟から日本全国に認知を広げてきました。
そのおいしさと美しさはなんといっても農家さんの長年の努力によるものですが、農家さんは「おいしいと食べてくれる人がいるから」と話します。
今日の着実な人気と信頼は、作り手の農家さん、流通を担う卸売業や小売業の方々、飲食店やお弁当屋さん、そしておいしく食べてくれる皆さんによって育まれてきました。

 

2. コシヒカリの田植えから収穫まで

私たちの食卓に並ぶ「ごはん」はどのようにして作られているのでしょうか。
コシヒカリの米作りは、一般的に春先からはじまります。種から苗を育て、土をつくり、田んぼをかいて、5月(早苗月)になったらいよいよ田植えです。
夏の間は、水の管理を行い、イネの生育状況を観察します。時々水を抜いて土を乾かしたり、様子を見ながら肥料を与えたり、虫や病気からイネを守りながら成長を見守ります。
大きく成長したイネは、秋に収穫され、中干しや脱穀を経てようやく白いお米になります。

 

 3. 地球温暖化による酷暑とコシヒカリの食味

地球温暖化は最も深刻な環境問題の一つですが、夏の酷暑やフェーン現象がイネの健やかな生育を阻んでおり、お米作りの現場への影響は年々深刻化しています。
新潟県産コシヒカリも、例外ではありません。
イネは通常、夏の間に大きく成長しますが、異常な高温に晒されると、コメへのデンプン蓄積異常が発生し、白濁化という品質低下が生じます。事実、平成22年産米の高温被害をはじめ、令和に入ってからも猛暑やフェーン現象による乾燥した熱風の影響で、新潟県各所でイネの高温障害が発生し一等米比率が大きく低下しています。
何代にもわたり新潟のおいしいお米を作り続けてきた農家さんも、この高温障害に悩まされており、新潟県全体としても解決を求める声が多くなってきました。

 

4. にいがたとコシヒカリ

多くの人にとって、新潟県産コシヒカリは、日常のごはんとして、誰かへの贈り物として、旅行やレストランでのお食事として、生活をちょっと良いものにしてくれる、そんなお米ではないでしょうか。おいしい新潟のコシヒカリは、おなかもこころも満たしてくれます。
新潟にとって、コシヒカリは特別なお米です。
コシヒカリは「越の国(北陸)に光り輝く品種」となることを期待して命名されましたが、その名のとおり、誕生してから今日に至るまで光り輝いてきました。
変わりゆく地球環境の中で、越の伝統を脈々と受け継ぐ、新潟のおいしいコシヒカリをこれからも食べたい。そんな思いから、三ツ井教授が取り組んできたのが『コシヒカリ新潟大学NU1号』の研究開発です。

 

5. 三ツ井教授が約20年間取り組んできたお米の研究

新潟大学農学部の三ツ井教授は、2005(平成17)年から今日まで20年近い歳月をかけて新潟大学・刈羽村先端農業バイオ研究センターの研究グループでこの課題に取り組んできました。
イネのうちコメとなる部分に含まれるデンプンの合成と分解のバランスに着目し、そのバランス異常がコメの白濁化を生んでいることを突き止めました。そして遺伝子組み換えではなく、イネが本来もつ環境適応力を引き出すことによって、暑さに強く高温・高CO2耐性を有する新品種の開発に成功しました。それが『コシヒカリ新潟大学NU1号』です。
研究に着手した当初、三ツ井先生の心を動かしていたのは「高温によりお米が白くなるのはなぜなのか」という学術的興味でした。しかし、研究が進み農家さんとの信頼関係が深くなっていく中で、次第に新潟に貢献できるお米を開発したいという考えに変わってゆきました。

 

6. 社会の協力を得て行った実証実験

2019(令和元)年から、農家さん、地域の皆さんそしてNU1号プロジェクトを応援してくださる方々からご支援をいただき「コシヒカリ新潟大学NU1号応援基金」によって、村上市、阿賀町、新発田市、刈羽村、柏崎市、南魚沼市、上越市などの県内各地実証実験を行ってきました。
過去3年間のすべての年において、一般流通しているコシヒカリに比べて高温被害粒の比率が低いことが実証できました。
さらに、2021(令和3)年、2022(令和4)年の評価では品質最高水準のS評価相当として、暑さに強いただけでなく、おいしく美しいコシヒカリとして、喜ばしい結果を得ることができました。

農家の方々をはじめ、個人・団体・企業など多くの方々から、ご寄附や応援メッセージをいただいています。

<応援メッセージ(一部)>
●新潟県農業の更なる発展、未来ある農村のため、研究を頑張ってください!!(一般男性)
●私は米農家です。最近は心白米、背白米が多くなってきて困っています。解決できるように、応援は惜しみません。頑張ってください。(農業・男性)
●作付面積は多くはありませんが、試験栽培等で協力できることは可能な範囲でしたいと思っています。(農家・男性)
●地球温暖化という深刻な環境問題の中、故郷のコシヒカリをしっかりと応援していきたいと思います。(一般男性)

 

7. お米を通じてこれからの社会が明るいものになるように

子どもたちに、おいしいお米をおなかいっぱい食べてほしいという願いから、実証実験により収穫されたNU1号のうち、一部を新潟市の子ども食堂や刈羽村小・中学校などへ寄附を行っています。子どもたちの貧困是正や食育にこれからも協力し、皆さまからいただいた応援が、コシヒカリ新潟大学NU1号を通してこれからの社会によい循環を生み出していきたいと思っています。

トップへ戻る