コメ共創IP

高温や干ばつをはじめとしたコメづくりの課題解決のために、国内、国外での研究と実証栽培で得られた研究データや知見を積み上げ、社会実装まで取組むことで、新たなコメ品種と栽培技術の開発、水田由来の温室効果ガスの削減への貢献を目指します。
活動の全体像
現在の取り組み
01.気候変動に対応したコメ品種と栽培技術の開発
①県内各地での実証実験
NU1号の実証栽培は2020年度より新潟県刈羽村にて開始しました。現在では新潟県内17の市町村にて実証栽培を行っています。(2025年4月現在)
②ベトナムでの実証実験
ベトナムメコンデルタ地域で、NU1号をはじめとする日本米の現地における最適な栽培方法の確立などを目的として、実証栽培を進めています。
02.水田由来の温室効果ガス削減に向けた取組(国内・ベトナム)
①NU1号を用いた中干し期間の延長による温室効果ガスの削減とコメの品質への影響などについて研究を進めています。
研究
01.農地における温室効果ガスの正確な放出量の測定に向けた研究
農地の土壌をサンプリングし、土壌の成分の違いによるGHG放出量の差を比較・検証することで、将来的には、温室効果ガスの削減量の可視化や温室効果ガスの放出量の予測、経済効果の推定なども目指しています。
02.水田における温室効果ガスの排出量の削減効果に関する研究
本学の温室内でポット栽培試験を実施するなど、水田を模した環境で複数の条件でイネを栽培し、温室効果ガス排出量の正確な測定を行うことで、施策による温室効果ガスの排出量への影響を検証しています。
新大コシヒカリ(コシヒカリ新潟大学NU1号)
「新大コシヒカリ」は、新潟大学・刈羽村先端農業バイオ研究センター(KAAB)の研究グループを中心に開発した全国的にも珍しい、大学が開発したコメの品種の名称です。
コシヒカリのおいしさはそのままに、一般的なコシヒカリと比べて高温耐性を持つことから、2020年に「コシヒカリ新潟大学NU1号」として新品種登録(登録番号:第27856号)されました。
開発背景
全国でも有数のコメどころ新潟では、近年の猛暑の影響でブランドである「コシヒカリ」が収量の減少や品質低下の被害が県内全体で発生し、地域産業全体に影響を与えています。
こうした状況の中で、”コメどころ新潟のコシヒカリを守りたい”という想いから、新潟大学・刈羽村先端農業バイオ研究センター(KAAB)の研究グループは、2005年から約20年近い歳月をかけて、この課題の解決に向けて取組みました。
研究グループらは、イネのうちコメとなる部分に含まれるデンプンの合成と分解のバランスに着目し、そのバランス異常がコメの白濁化といった品質低下の原因となっていることを突き止めました。
そして遺伝子組み換えではなく、イネが本来もつ環境適応力を引き出すことによって、暑さに強く高温耐性を有する新品種「新大コシヒカリ」の開発に成功しました。
環境に優しいコメづくり
令和5年度からは、農林水産省「みどりの食料システム戦略」で掲げられている農産物生産由来の温室効果ガス削減へ貢献するため、水稲栽培の重要な管理技術である中干しなどの方法を用いたコメ作りに取り組んでいます。
新大コシヒカリの実証実験では、水田からの温室効果ガスの排出量は顕著に低減されただけではなく、収穫されたコメの品質にも良い影響を与える可能性が示唆される結果となりました。
令和5年度新潟県刈羽村産の新大コシヒカリ、令和6年度南魚沼産の新大コシヒカリは、農林水産省「温室効果ガス削減見える化実証事業」において温室効果ガスの削減量が認められ、最高評価の三ツ星を獲得しました。
地域への還元
2020年度から、実証実験で収穫したお米を、地域の子ども食堂や、小学校や中学校等の給食に寄贈しています。
海外機関との連携協力
①ベトナムビンロン省とのMOU締結(2024年8月)
②カントー大学(ベトナム)との連携(2025年4月)