新潟大学 社会連携推進機構

医療・健康・福祉
2025.05.07

スマートフォン画面やエレベータボタン等からの微生物の検出・解析

医学部 保健学科 臨床化学研究室
涌井 杏奈
涌井 杏奈
WAKUI Anna
保健学研究科 非常勤講師
佐藤 拓一
佐藤 拓一
SATO Takuichi
医歯学系 教授
専門分野
臨床化学,衛生学,細菌学
キーワード
手洗い、皮膚、スマートフォン、常在菌叢、エタノール消毒、エレベータボタン、不織布マスク
関連URL
https://www.clg.niigata-u.ac.jp/introduction/inspection_prof.html?prof_code=PRF0045

研究の目的、概要、期待される効果

 新型コロナウイルスによる感染症の流行を経て、手指衛生やマスク着用による感染対策にこれまで以上に関心が向けられています。流行前と比べて、手指消毒やマスクを着用する頻度・機会は格段に増加しました。長期に渡る、日常的なマスク着用による、肌の健康や常在菌に与える影響も懸念されます。マスク以外では、スマートフォン画面やエレベータボタンなどへの接触頻度が高く、清拭・消毒を勧める記事・報道も見かけます。「清拭・消毒」はどの程度必要なのでしょうか。そこでスマートフォン画面やエレベータボタン、不織布マスクに付着・生息する微生物をサンプリングし、培養法および分子生物学的手法により解析を試みました。
 スマートフォン画面やエレベータボタン、不織布マスクの何れでも、皮膚由来と考えられるCutibacteriumやStaphylococcusが優勢でした。不織布マスクでCutibacteriumが特に高い割合を示し、スマートフォン画面ではその他に、口腔由来の細菌(Streptococcus, Schaalia, Actinomycesなど)も優勢菌として検出されました。
 スマートフォン画面は、特別に清拭や消毒を施していないにもかかわらず、細菌量が数百個程度と少なく、いかに手指で触れたとしても、スマートフォン画面は微生物が生息するには適していないのかもしれません。加えて、手指の皮膚常在菌叢は皮膚表面を弱酸性に傾けることにより、諸々の感染から守っているとされることから、過度な、手洗い・消毒には注意を払う必要があるのかもしれません。
 一方、不織布マスクを半日~1日、普段通りに着用するだけで、数万個レベルの細菌が付着・生息することが判明しました。
 今後、本研究手法を用いて、各種メーカーから市販されている抗菌用製品(例;スマートフォン用抗菌フィルム、多機能マスクなど)の効果の再検証、さらにはドアノブや水道の蛇口など臨床や日常生活に、より即して研究を広げられたらと考えています。

関連する知的財産論文等

  • ◆Wakui A et al: Profiling of the Microbes on the Surface of Smartphone Touchscreens. Journal of Oral Biosciences 67(1): Article 100607 (4 pages), 2025.
  • ◆涌井杏奈:使用済みマスクおよびスマートフォン画面に付着・生息する微生物のプロファイリング,2023-2024年度 科研費 若手研究

アピールポイント

コロナ禍を経て関心が高まったスマートフォンや使用済み不織布マスク表面上などの微生物叢について、医学・保健学の最新の知見・検査技術を活用して解析し、スキンケアについて新たな提言を目指す研究です。

つながりたい分野

  • ・衛生学
  • ・自治体における災害用の備蓄

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