
混合効果位置スケールモデルによる個人内変動と個人間変動の分析

研究の目的、概要、期待される効果
混合効果位置スケールモデルと呼ばれる分析法により、自己概念の個人内変動と個人間変動を検討しています(図1)。
この方法は人の変化に関するあらゆる量的データに適用できるものです。人には測定可能な様々な心理的・生理的属性がありますが、概ね100人以上の人々に関して、縦断的なデータが得られれば、どのような測定値でも、変化の解析を行えます。その利点は、個人内と個人間の変化に影響する異なる要因を同じモデルの中で一括して評価できることです。
例えば、抑うつ的な気分の変化には、日々のストレスの違いのような個人的効果と、年収のような社会経済的地位による全体的効果があります。ストレスと年収にも関連はありますが、これまでは別に分析せざるを得ませんでした。しかし、本研究の方法を用いると、その関連を含めて一括して1つのモデル内で検証できます。さらに、調べたい変数の個人内変動と個人間変動の大きさも比較できるので、現象理解に役立ちます。
この分析方法は、教育(テスト得点など)、福祉(育児不安・介護負担など)、保健(飲酒・カロリー摂取量など)、看護(治療行為の動機づけなど)のような多くの社会・健康科学領域のデータに適用できる新しい手法です。
図の測定値は外向性の程度に関する自己評定です。自分の行動特徴に関する自分自身による評定なので、自己概念の一部にあたります。
この図には、変動に影響する要因はなくて、単純に個人内変動と個人間変動を示しています。
上下に伸びている線分は、各個人の測定値の変動幅(±1SD)を表します。これが個人内変動です。
線分の中心にある「〇」は、各個人の平均値を示しています。その高さが人によって違うのがわかるかと思います。これが個人間変動です。
関連する知的財産論文等
- ・『自己概念のゆらぎ:対人関係におけるその分化と変動』 知泉書館 2019年
- ・「Narcissism, variability in self-concept, and well-being」『Journal of Research in Personality』,45巻, 2011年
- ・「親の自己愛と子への攻撃:自己の不遇を子に帰すとき」,『社会心理学研究』, 22巻, 2006年
アピールポイント
手元に人に関する大量データがあるけれども、どうやって分析したらよいのだろうか? 分析法は多々あるので、そんな疑問があるときにはどうぞご相談ください。
つながりたい分野
- ・教育、福祉、保健、看護、医療などの現場やセンターなどで対象者に関するデータをお持ちの方々、民間、公的機関、県庁・市役所等で住民に関する諸調査の企画担当の方々。
お問い合わせは新潟大学社会連携推進機構ワンストップカウンターまで
onestop@adm.niigata-u.ac.jp